私はまずこの疑問からスタートしました。
「食べるな、運動しろ」としたとき、ストレスを減らしなさい、そして自分の遺伝的体質をチェックをしましょう。
医師のこういった言葉は、物理的には患者さんの耳に伝わっているのですが、なぜか本質的にはなかなか伝わりません。
どうしてなのでしょう。
私は、一つには現実感の欠如があったのではないかと思います。
医師の言葉は患者さんにとって「テキスト」ではありますが、あまり現実感がともなわないのではないでしょうか。
いつも診てもらう診察室は、自分の現実の生活にはない特別な場所です。
そこは医師の話を聞いて勉強したり、認識を新たにしたりする場所ですが、自分の生活を実践する場とは違います。
だから、診察を終わってお金を払い、病院を出て自分自身の生活に戻ったときには、少し前に聞いた医師の言葉はすっかり(あるいはほとんど) どこかへ行ってしまうのではないでしょうか。
再び現実に戻って次のスケジュールをこなし、あるいは抱えている悩みに戻ってしまう、それが人間なのです。
言い換えれば、患者さんの生活習慣と医療施設のあいだにあるギャップを埋める場や空間がないのです。
私はそこに注目して、当クリニックをつくりました。
『 T メディカルクリニック』では、診察を終わった糖尿病の患者さんの多くは、ジャージに着替え、いま聞いたこと(運動はああやって、栄養はこうとって、ストレスにはこう対処しよう) を、専門的なインストラクターや栄養士の指示を受けながら実践します。
運動や食事やストレス解消といったことは、ほとんどの患者さんがもともと、本当は好きなのです。
誰でも軽く体を動かすことは楽しいし、音楽療法やアロマテラピー、マッサージといったストレス解消法も苦痛ではありません。
しかし、そうした施設に通ってやるとなると、自分の生活のなかではなかなか現実感が出てきません。
自分で工夫してやる人はいいのですが、現代人の誰もが口にする「忙しい」という理由で、なかなか現実に実行できません。
医師の言葉は理解できたとしても、です。
そこで、診察室を出てすぐに、その施設内でこうしたいくつかの療法を実際に行なってもらうのです。
それは患者さんの治療への動機づけをずっと維持するために、良い効果をあげていますし、「やれば楽しい」ということを体で理解していただけることになります。
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